上半身を自重トレで!フランクメドラノからプリズナートレーニングへ

私は学生時代に新しく始めたラグビーに夢中になり、トレーニングに明け暮れた日々がありました。

しかし「トレーニング」と言っても、スポーツ強豪校ではなかったため、トレーニング器具には恵まれませんでしたし、サプリメントを買う金銭的余裕もありませんでした。

そこで、器具やサプリメントがなくても自宅で身体を鍛えることができる方法を研究した結果、「自重トレーニングの神様」という異名を持つ「フランク・メドラノ」が目に留まりました。

自重トレーニングの神様「フランク・メドラノ」

調べれば調べるほど、フランク・メドラノの超人的な肉体とトレーニング内容に釘付けにされました。彫刻のように繊維まで浮き上がった筋肉の一つ一つや、重力を感じさせない鉄棒運動……私にとって彼は、想像していた自重トレーニングの限界を取り払ってくれた恩人です。

フランク・メドラノを尊敬するようになったのはそれだけではありません。

今や超人的な身体能力を持っていますが、トレーニング歴は20代後半からであること、一般的なウェイトトレーニングを経て自重トレーニングに行き着いていること、ヴィーガン(絶対菜食主義者)であり野菜や穀物のみでその身体を作り上げていることも大きな刺激となりました。

「大それた器具やサプリメントがなくても、身体は変えることができる」

トレーニング初心者で、トレーニング環境にも恵まれなかった私にとって、フランク・メドラノは希望となりました。

自重トレーニングでラグビーに役立つ上半身を

私は自重トレーニングを工夫して、身体を変えていこうと決心しました。

憧れのフランク・メドラノと自分とでは明らかに身体も身体能力の高さも異なるため、彼のトレーニングは真似できそうにありませんでした。

私は、自分の目的とレベルにあった種目を考えなければなりませんでした。

私は主に上半身(大胸筋、三角筋、上腕三頭筋)のトレーニングに重点を置くことにしました。ラグビーでは特に身体を守る鎧のような役割となり、また身体のシルエットを形作る筋肉なので、見た目の変化がモチベーション維持に繋がると思ったのです。

負荷をかけにくい自重トレーニングの問題点

上半身を鍛えるトレーニングとしては、プッシュアップが有名です。しかし一回あたりの負荷が小さすぎるという問題がありました。

筋力トレーニングは目的に合わせて負荷と回数を調整することが大切です。

ボディビルダーや、コンタクトスポーツなど、筋肥大を目的にトレーニングを行うものは中負荷を中回数が原則です。

腕立て伏せなら連続で50〜100回は当たり前にできた当時の私には単なるプッシュアップは低負荷高回数にあたり、目的には合いませんでした。

それでもめげずに色々なトレーニング方法を調べるうち、「プリズナートレーニング」といわれる、自重トレーニングの最高峰のトレーニングと出会いました。

自重トレの最高峰「プリズナートレーニング」

プリズナートレーニングとは、「ポールウェイド」という元囚人が二十三年間の厳しい監獄生活後に書いた「Convict conditioning system」という本が元となっています。

この本では、アメリカの監獄の過酷な環境下で生き延びるためにポールウェイドが行ってきたトレーニング内容が記されています。

この本は2017年には和訳され、「囚人トレーニング」や「プリズナートレーニング」という名前で日本でも親しまれるようになりました。トレーニング好きの方は一度は耳にしたことがあるかもしれませんね。

このトレーニング方法の特徴は、記されている方法が全て自重トレーニングなのにもかかわらず、負荷を自由に変えられ、狙った部位を効果的に鍛えることのできる点にあります。

BIG3とBIG6の違い

ウエイトトレーニングの全身を満遍なく鍛える基本となる動作に「ベンチプレス」、「デッドリフト」、「スクワット」の3つがあり、これらを総称してBIG3と呼ばれます。

これに対して、プリズナートレーニングには、BIG6という動作があります。BIG6とは、「プッシュアップ(腕立て伏せ)」、「チンニング(懸垂)」、「スクワット」、「ブリッジ」、「レッグレイズ(脚上げ)」、「ハンドスタンドプッシュアップ(逆立ち腕立て伏せ)」の6種目のことです。

さらに、BIG6それぞれのトレーニングに10段階のレベルがあります。全く運動をしたことのないような女性でも行えるレベル1から、本格的なトレーニングを行なっている人でもかなりの負荷に感じるレベル10まで好きな段階から開始できて、少しずつレベルを上げていけるのです。

例えばプッシュアップで例をあげれば、立ったまま壁について腕立て伏せのような動作を行う簡単な操作がレベル1です。そこから私たちにも馴染み深い普通のプッシュアップを経て、最終的には片手で腕立て伏せ、となっていきます。

上半身を鍛えるプリズナートレーニングの種目選び

これなら自分のレベルにあった負荷の自重トレーニングを見つけることができると思った私は、このBIG6のうち、主に上半身に効くプッシュアップ、ハンドスタンドプッシュアップを選択し、更にその中から自分に合ったレベルを選択しました。

腕立て伏せには慣れていたために、プッシュアップはレベル9の「レバープッシュアップ」、逆立ち腕立て伏せは行ったことがなかったので、レベル4のハーフハンドスタンドプッシュアップを選択しました。

レバープッシュアップとは、反対側の手にボールなどの補助を置いて片手腕立て伏せを行う種目で、ハーフハンドスタンドプッシュアップは逆立ち腕立て伏せの動かす範囲を半分にした種目です。

プリズナートレーニングの回数の目安

プリズナートレーニングにはセット数×回数も記載されていました。

プッシュアップは2×20、ハンドスタンドプッシュアップは2×15と記載されていたので基本的にはそのとおり行うことにしました。

調子がいい日は、セット数を増やしてみる、悪い日は回数を減らしたり、種目のレベルを一段階下げるなどの工夫はありました。

トレーニング方法が決まれば、それからは自分との戦いでした。練習を終え、帰宅したらカバンを放り出して服を脱ぎ捨てて夢中でトレーニングに励み、そのままシャワーを浴びる日々でした。

一連の動作をルーティンにすると、サボることなく続けることができました。

筋トレに限らず、新しい習慣を作るためには、何か毎日やっている習慣と結びつけることが大事だと感じました。

ラグビー現役時代から引退後も自重トレを継続

トレーニング環境に恵まれていませんでしたが、もうそれを言い訳にすることはありませんでした。自重トレーニングと野菜のみで肉体を作り上げたフランク・メドラノ、監獄内の限られた環境でのトレーニングで生き延びたポールウェイドという先人がいると思うと、週に数回器具が使えて、肉や魚を口にできる自分が吐く弱音は、ただの泣き言のようにしか思えませんでした。

初めて身体の変化に気がついたのはトレーニングを行なって2カ月ほど経った頃のことです。

久しぶりに会った他校の選手から「ゴツくなった?」と聞かれたのです。味をしめた私は、舞い上がって継続するうち、会う人々ほとんどに身体の変化を指摘されるようになりました。見た目の変化だけではなく、種目のレベルや回数も向上しました。

ラグビー引退までこのトレーニングは継続し、増量は続けました。引退した現在は維持と程よい減量のために、先ほどのメニューから何段階かレベルを下げて行なっています。増量だけでなく、維持や減量など目的に合わせて行えるのもプリズナートレーニングの利点だと思います。

さまざまなきっかけで筋トレをしている人、始めようとしている人がいると思います。その中にはまだトレーニング環境に恵まれていない方も多いと思います。もしかすると学生時代の私のように、毎日のようにウェイトを持ち上げていて、高いサプリメントを摂取している人たちを見て羨ましく思っている人もいるかもしれません。

しかし、世の中にはそういうものを使わずに己の身体を鍛えている人も確かにいます。

今ある環境でも身体を変える方法は必ずあります。フランク・メドラノやポールウェイドといった先人が作り上げた最高峰の自重トレーニングに触れてみて、実際に試してみて、身体の変化を味わってみてはいかがでしょうか。

(文・もこば)