私は野球のピッチャーを続けているが、26~7歳を超えたあたりから、足を上げること(ピッチング動作の始動)に少ししんどさを覚えていた。
ウエイトトレーニングはしっかりこなしていたし、体も年々進化していると感じてはいたが、なぜか足を上げることに関してはだるさを感じることが多くなった。
原因がわからず、股関節周りのストレッチを多めに取り入れて見たものの、まるで効果がなく、どうすれば症状が改善するのがわからなかった。
元広島東洋カープ投手、山中達也に相談
そこでトレーニングを含め、投球動作に精通しているプロ野球選手がいると聞き、私は四国にいる元広島東洋カープ投手、山中達也氏にお話を伺うことにした。
山中達也投手は、高校から育成ドラフトにて広島東洋カープに入団。4年の在籍から独立リーグの香川オリーブガイナーズに入団。
不慮の事故で選手生命を断たれかねない大怪我をするが、奇跡的に日常生活に問題ないところまで回復した不屈の選手だ。
山中投手は、プロ野球選手時代から本格的にトレーニングの勉強を始め、ピッチングの動作(メカニクス)にも精通している。また、工藤公康氏とも対談したという経験もある。
現在は、四国の球場を管理する仕事に従事する傍ら、プロ野球選手OBとして、少年野球に対するイベントに参加する等で活躍している。
私は、山中氏と10年ほど親交があり、野球の話やトレーニングの話を中心に情報交換をさせていただいた。
その中で、冒頭の足を上げる際のだるさを相談したところ、腸腰筋が原因ではないかという指摘をいただいた。
てっきり関節の硬さが原因だと思っていたので目からウロコだった。
腸腰筋の働き
さて、ここからは、私が重要視している部位(ターゲット)を解説するという。
「腸腰筋」は上半身と下半身をつないでいる唯一の筋肉である。
腸腰筋は総称で、正確には「腸骨筋」と「大腰筋」の二つに分かれている。
腸骨筋は骨盤の内側から大腿骨に繋がっており、主に股関節の屈曲に作用している。大腰筋は、背骨の下あたりから大腿骨に繋がっており、主に、股関節の屈曲に作用している。
ともに大腿骨でつながっているので、2つ合わせて腸腰筋と呼ばれているという訳だ。
腸腰筋は、ピッチングでは足を上に引き上げる時にモロに作用する。
さらに、日常生活においてはとても身近な筋肉で、歩行時にわずかに足を上げて歩くので、その時に腸腰筋が作用しているという仕組みだ。
腸腰筋を鍛えるべき理由
腸腰筋が弱ると、足を引き上げるのがしんどくなり、代わりの筋肉で引き上げようとしてしまう。
股関節を後傾(身体を後ろに傾ける状態)させてしまいお尻を落とした状態で歩行しようとする。
これが長年続くと猫背や腰痛を招いてしまう。
さらに、高齢となってくると足がさらに引き上げ辛くなるので、つまずきやすく、大怪我になりやすいのだ。
スポーツにおいては、鍛えておくと足を大きく使えるし、日常生活では楽に歩けるようになるので鍛えておくべき筋肉と言える。
腸腰筋トレーニングのやり方
今から解説するのは、手軽に誰でも行える腸腰筋エクササイズ。
腸腰筋は、ちょっとした高さのあるものがあれば誰でも鍛えることが可能だ。
1.片足連続上げ下ろし
- 直立でたつ。
- 片方の膝を腰の位置まで上げて、止めずにそのまま元の位置に戻す。
これをリズムよく30回繰り返す。両足3セットずつ行う。その場で行進するイメージで行うとよい。
2.踏み台昇降
小学校で心拍数の変化を見る際にやった人は多いのではないだろうか。
- 椅子を用意する。脚の高いものより、膝下くらいの高さの椅子が望ましい。
- リズムよく右足左足の順に椅子の上に立ち、そのまま降りる。
20回程度を2~3セット繰り返す。
3.コーンまたぎ
- 膝下くらいの高さがあり、垂直に立てらせれる細長いコーン(ゴミ箱、ポール等でも可)を用意する。
- 片方の足を上げる足、もう片足を軸足とする。①で用意したコーンを軸足の爪先の前に置く。
- 直立の状態から、上げる方の足を膝から上げて、コーンの頂点を越えるよう足裏を通す。そして足をクロスさせるようにして足を下ろす。
- ③と同じ要領で、元の位置に足を戻す。
これを片足ずつ20往復×2~3セット行う。動かし方のコツとしては、ワイパーが動いているイメージで足を動かすとわかりやすい。
特に私は1と3のトレーニングを日常的に取り入れることでだんだんと足を上げることが苦にならなくなり、次第にピッチングの調子も良くなってきた。
また、鍛えることで、年齢を重ねてもしっかり歩けるようになると信じている。